パーカー・カイポ・カネアクア師。
オイラの、この人には逆らえない、という数少ない「師」のひとり。
ただ、「師」と呼ぼうとすると「”兄”と呼べ」と無茶なことを言い始める。
彼はカフナ・ラパアウ(古代の医者)の家系に生まれて英才教育を受けたスペシャリスト。
「ロミロミ師」という人もいるが、正式には医療をすべてすることのできる「医者」なのだ。
Ho’o ponopono(ホオポノポノ)、Ho’o maemae(ホオマエマエ)、そしてLa’au Lapaau(ラアウラパアウ)。
心と体をクリアにして、きれいでバランスの良いものを身体に取り入れる。
このすべてをコントロールすることができてこそ、の「医者」。
そういうハワイアン古来の医学を学んだ数少ないネイティブのうちの一人らしい。
「やんちゃ」という人には数多くあってきたが、この人の「やんちゃ」は破格。
70歳を前にして夜中まで歌い踊り、人に酒を飲ませる。
ふと気がついたらオイラの目の前にジョッキが6杯置いてあったことがある。
酔ってしまった私を尻目に、自分がジョッキを頼むごとに私の分も頼んでテーブルに並べていたらしい。
「もう飲めねえ」
言ったとたんにジョッキが頭の上に落ちてきた。
「ゴン」
カイポ師がジョッキをオイラの頭の上に載せた音。
「ゴン」
どうやら飲み干すまではそれが続くらしい。
仕方ないので無理にでも飲み干すしかない。
ゴクゴクゴク…
仕方ない。師匠の命令である。飲み干す。
師匠、オイラを抱きしめる。
キスの嵐。…気持ち悪さが倍増する。
ひとしきりのキスの後に開放。
ひとときのハッピータイム。…5分後。
「ゴン」
またまたジョッキが頭に乗っかっている。
以下繰り返し。
明け方、店の前に沈没したオイラをそのままにしておいていつの間にか消えてしまう師匠。
師匠の息子が「ごめんね、ごめんね」と言いながら家まで運んでくれた。
こういう師匠なんだけど好きなんだなぁ。
最近会えない日々は続いているけれども、そういうことの関係ない存在。
きっとオイラがいる限り彼を尊敬し続けるだろうし、感謝しつづけるだろうし。
きっと彼がいる限りオイラは彼に飲まされ続けるんだろうし、教わり続けるんだろうと思う。
※写真は高砂淳二さんの「ハワイの50の贈り物」から本人のご許可を得て掲載させていただいています。