テンプル・ロミロミ
カフナ・ロミロミ
「LomiLomi」でググってみる(検索してみる)と「テンプル・ロミロミ」や「カフナ・ロミロミ」と呼ばれるロミロミが多く検索結果として出てきます。
そしてその多くのサイトに「自分たちこそ本物(Real)で伝統的(Traditional)なロミロミである」というようなことが書いてあったりするので、生徒さんをはじめとしたロミロミセラピストの皆さまから「これが本物(本当にハワイアンの)のロミロミなのですか?」という質問がたくさんきます。
そこで一度【テンプル・ロミロミ】【カフナ・ロミロミ】についてまとめてみたいと思います。
まずはテンプル・ロミロミについて
たしかに「テンプル」は英語ですから、テンプルロミロミが昔ながらのハワイ語の呼び名ではないことは間違いありません。
そしてカフナ・ロミロミについてはなんとなく「ありそうな感じ」がします。
これについては次の文献を見るとシンプルにわかりやすいでしょう。
(文献より)
テンプルスタイル・ロミロミ
現在の「テンプル・ロミロミ」「ロミロミ・ヌイ」「セイクリッド・ボディーワーク」「カフナ・ロミロミ」といった名称は、歴史的な文献には全く出てこないものです。
(中略)
その(テンプル式ロミロミ)創設者はエイブラハム・カヴァイイ・デカンブラ。彼はハワイアンの血は引いていないため、これ(テンプル式ロミロミ)は決して伝統的で歴史のあるものではないが、ハワイで生まれ育った人間が開発した「ハワイアンマッサージである」であることには間違いない。(しかしながらそれを「伝統的なロミロミである」と定義することはできない。また新しい「現代のロミロミ」といってもいいかどうかは意見の分かれるところだ)
(中略)
カハレヴァイによると、(テンプルスタイル創始者)エイブラハムのボディーワークは4つの特徴がある。前腕でオイルを使う手技、踊るような足さばきでの施術、患者が裸であること、そしていくつかのケースによっては「神聖で性的な儀式」であること、である。
カフナ・ロミロミ
たしかに、カフナ・ラアウ・ラパアウやカフナ・ハハもロミロミを行いましたが、はたしてロミロミセラピストは「カフナ」と呼ばれていたのでしょうか?
ロミロミ、イヴィクアモオ、ハモハモという言葉を調べて見ても、誰ひとりとして「カフナ」という言葉を使っていません。ロミロミセラピストは「聖職者」や「医者」というよりもむしろ「人」や「召使い・付き人」という言葉で表されていました。
カマカウによれば、ロミロミはカフナ・ラパアウ(医者)のカリキュラムには入っていませんでした。
(中略)
「カフナ・ロミロミ」が最初に文献や話に出てくるのは、1933年のカメハメハスクールでのニルズ・P・ラーセン、さらに1966年のイヴァル・ラーセンや1999年のジューン・グートマーニャの話の中でになります。多くの本や記事で「カフナ・ロミロミ」という言葉を見かけるようになるのは、それ以降のことでした。
(Makana Chai / Na Mo’olelo Na Mo’olelo Lomilomi 英語)
(Noa Yoshi / ロミロミとハワイアンヒーリングの教科書 日本語)
Na Mo’olelo Lomilomi: The Traditions of Hawaiian Massage and Healing
ロミロミとハワイアン・ヒーリングの教科書 ヒーラーたちが受け継いできた祈りと教えを学ぶために
まとめ
以上の通り「テンプル・ロミロミ」「ロミロミ・ヌイ」「セイクリッド・ボディーワーク」「カフナ・ロミロミ」という言葉が昔からの文献にはないことから、古代ハワイアンが行っていたロミロミの流派の流れを汲んでいるという明確な確証はありません。
テンプル・ロミロミについては、近代になって作られたものであることがわかっていますから少なくとも「伝統的に古代ハワイアンが行っていた」ロミロミではありません。
ハワイに生まれ育ったハワイアンではない外国人がロミロミの流れを汲んで、特に性力の増強や性的な意味合いの強いマッサージとしてノウハウを体系化したのが原点、ということになりそうです。
さらにカフナ・ロミロミについては、資料やインタビューから、ロミロミ専門のカフナというのはいなかった、というのが通説です。
医療関連のカフナはロミロミを、様々な治療法の中の一つの技術的な方法としてロミロミを使っていたにすぎないからです。
ロミロミの専門家が生まれたのは、王族を治療するカフナの技術が一般人に広がってできた「カナカ・ロミロミ」と呼ばれる町医者のような存在からだといわれています。
つまり職業としての「カフナ・ロミロミ」が存在したというのは考えにくいということになります。
カフナ・ロミロミの意味として考えられるのは「カフナが行っていたロミロミの技術」を継承しているということになりますが、カフナという制度が1820年代前半に廃止されてから約200年経っていますから、その継承というのも「?」の部分が多いところです。
また、ロミロミの基本としている人が多いお腹を中心とした「オプ・フリ」のロミロミの技術もポルトガルから来たものだ、という文献資料もあったりするので、なにが古代から行われていた伝統ロミロミなのかは不明な点が多いのです。
要するに、ロミロミとは西洋医学などもそうであるように進化し続けているのです。
こう考えていくと、古代からハワイアンが大切に伝え続けているのは「ロミロミの流派やプロトコル」ではなく「ロミロミの基本的な考え方」なのではないでしょうか。
その考え方に基づいて間違っていたものは排除し、新たに治療の助けになる手技やノウハウを付け加えて進化しているのがロミロミなのかもしれません。
個人的には
「自分こそ正当なロミロミの継承者である」という自負はあまり意味のないことなのかもしれないと思っています。
それよりも自然(天)のマナを自分を通して患者さん(お客さん)に入れ込むことで元気になっていただく、という思想と方法論がロミロミ、ということでいいと考えています。
伝統的な医療から生まれたロミロミは、今でも進化を続けている、と考えると、今まで以上にロミロミが素敵なものに思えてきませんか?