ロミロミ(lomilomi)とはハワイ語で「マッサージ」「マッサージする」という意味。「ロミ(lomi)」には「揉む、擦る、捏ねる」という意味があり、ハワイでは古代から伝統的に薬草と自然の恵み、そしてロミロミ(体を揉むこと)で病気を予防し治療してきました。現代においてロミロミはリラクゼーションマッサージとして認知されています。
このページでは、ハワイアンヒーリング&ロミロミ研究家がロミロミについて詳しく説明します。
文:Noa Yoshi
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『ロミロミとハワイアンヒーリングの教科書』
『アロハヒーリング20の智慧』著者
ロミロミとは、カメハメハ大王がハワイ王朝に君臨した時代よりもはるか昔からハワイアンの健康を保つために行われてきたネイティブハワイアン(ハワイ先住民)の「癒しの方法」。
宇宙、そして地球にある「生きる力(マナ)」を上手に取り込んでいくことで、人々のココロとカラダを「正常な状態」に保つために行ってきた伝統医療です。
現代ではハワイアンロミロミマッサージとしてアメリカのセレブ発信で世界的にも有名になってきました。
ハワイ語の「Lomi(ロミ)」とは数あるマッサージテクニックのひとつで、手のひらを使ってしっかりと揉む、という技のこと。
そしてさらに「揉む」という動きのすべてのこと…手のひらや指で揉む、足で揉む、押揉む、さする…などを意味します。
「LomiLomi(ロミロミ)」は、そのまま翻訳すると「揉み揉み」。単語であるLomiを重ねることで「マッサージ」「マッサージをする」「マッサージする人」という意味となります。
また現在、ハワイ研究家の間では「ハワイアンが行っていた健康を保つための伝統医療」という大きな意味としてとらえられています。
(隔月刊誌「セラピスト」2014年4月号、2015年2月号のロミロミ特集記事をチェック!)
ハワイのロミロミを理解しようとする場合、まずはハワイアン文化のベーシックである「アロハスピリット」について理解する必要があります。
たとえば、雨が来ることを風の匂いで感じ、雨を暖かくやさしいものに感じ、雨をくれた宇宙と大地に感謝する…
それがハワイアンのアロハスピリットの基本です。
この考え方は南太平洋の島々…ポリネシアンの島々に共通したもので、根源は主にハワイに移住したマルケサス諸島やタヒチから持ち込まれました。
昔からハワイアンは島の自然を畏れ、敬い、自分達を守ってくれるものであると信じ続けています。
宗教的には日本の古代と同様の「八百万(やおよろず)の神」、自然信仰です。
この信仰こそがハワイアンスピリットの原点でもあり、ロミロミの原点でもあります。
自然信仰のスピリットは現代日本にも脈々と流れています。
たとえば「いただきます」という食事前のあいさつ。自然の命をいただくことで自分たちが生きているのだという「信仰」が今も残っている証拠です。
神様に「食べ物をくれてありがとう」とお祈りするのではなく、自然の命に感謝をする気持ちというのは古代のハワイアンと共通したスピリットなのです。
だからこそ、日本人の多くがハワイを愛し、ロミロミが日本人の心と体をもしっかりと癒してくれるのです。
ハワイアンのアロハスピリットを理解してくるとロミロミが少しづつ見えてきます。
自然と大地に対する自然信仰は、病気になった時、具合の悪くなった時にも頼られる信仰となります。
もともと病気を治すことは「祈ること」でした。
昔のハワイアンは、病気になるということは「悪いことをして神様が怒ったから」だと考えました。
つまりバチ(罰)が当たったから病気になったと考えたからです。
ですから神様に謝る、つまり祈ることで病気を治そうとしたのです。
その当時、絶対的な権力を持つ王ですら、神様を怒らせて病気になってしまうことがありました。
王のもとに生きていく人々にとって、王が病気になることは大問題でした。
そこで特別な力を持つ医療専門の「カフナ(神と会話のできる特殊能力を持った各分野の専門家、神官)」が王(王家)に選ばれて王家を治療するための祈りを捧げました。
医療が祈祷の儀式としてはじめられたのです。
「カフナ」は「ヘイアウ」と呼ばれる神殿を中心にこの祈祷の儀式を行いました。
有名なのはオアフ島アイエアに残るカエカヴァ・ヘイアウです。ここでは多くのハーブが育てられ、癒しのヘイアウとして機能していたといわれています。
そして祈祷だけでは治らない病気に対して、体を揉んだり薬草を使って治療するノウハウも蓄積されていきます。
ハワイアンは、数百年の試行錯誤を経て、かなり高度な医療ノウハウを持っていたといわれています。
実際の古代から伝わるロミロミの現場を資料から紹介します。
(文献より)
儀式は場所によってもさまざまな形をとったらしいのですが、基本的には「カフナ」が祈りをささげ、患部に触ったり、もんだり、手かざしをしたり、温めた石を乗っけたり、木の棒で押したり、ハーブ(草)を煎じて飲ませたりかませたり……、色々な方法を使って治療を行いました。広い意味でのロミロミとは、これら数百とも言われる多種な方法を駆使した医療を指します。
ロミロミはマッサージ療法、温熱療法、食事療法、クレンジング(洗浄療法)、トロピカルなハーブセラピー(薬草療法)、運動療法から健康に関する教育やコンサルティング、ホオポノポノ(心をクリアにする儀式)など様々な技術で人を治してきた伝統的な「癒しの方法」である。古代の施術者は「ほねつぎ」までやっていたと言われている。(Dane Kaohelani Silva)
■参考文献
(Makana Chai / Na Mo’olelo Na Mo’olelo Lomilomi 英語)
(Noa Yoshi / ロミロミとハワイアンヒーリングの教科書 日本語)
Na Mo’olelo Lomilomi: The Traditions of Hawaiian Massage and Healing
ロミロミとハワイアン・ヒーリングの教科書 ヒーラーたちが受け継いできた祈りと教えを学ぶために
また、この医療の方法は「オハナ・ロミロミ」という家庭の医学として広く一般家庭にも拡く浸透していきます。
昔のハワイアンは全員、簡単な応急処置をできたと言われています。
ロミロミは島によっても、師匠筋によっても、家庭によっても様々なロミロミがあったとされています。
しかしながらこの「古代」のロミロミはカメハメハ2世、3世の古代ハワイアンの宗教廃止の際にその原点である宗教の禁止とともに一度捨て去られてしまいます。
つまりカフナラアウラパアウ(特殊能力を持つ医者)の世襲制度もここで途切れてしまいます。
それを再び蘇らせたのがアンティマーガレット(マチャド)女史。ロミロミ再興の母、と言っても過言ではない女性でした。
彼女がいなければこの素晴らしい癒しの方法であるロミロミは世界的に知られていなかったかも知れません。
最近では様々なロミロミが様々な形で甦ってきており、ハワイでは正式な民間医療としてとても大切にされています。
現在でも、Dane Kaohelani Silva師、Kaipo Kaneakua師といった優秀なロミロミの後継者が、現代の自然と人々に合ったロミロミを使って人々を癒し続けているのです。
さらに日本人も含む多くの人々がこのハワイアンロミロミを学び、カナカロミロミ(セラピスト)となって各地で疲れた方々を癒しています。
ロミロミは、西洋や東洋に伝わる多くのセラピーと共通したコンセプト(基本的な考え方)を持っています。
宇宙、地球にある「生きる力」を調和して取り入れることで体を正常な状態に戻したり維持したりしようとする考え方です。
この「生きる力」のことをハワイでは[マナ]と呼びます。
ロミロミとは「マナを人の体に取り込むための方法である」とロミロミ達人たちは言います。
[マナ]とは、スピリチュアルな力までを含んだ自然のエネルギーのことで、人や生きものはすべてこのマナで生かされている、というのが古代から伝わるハワイの考え方でもあったわけです。
マナが減ると病気になり、怪我をしたところからはマナが抜けていき、マナが無くなると死んでしまう…これがハワイアンの健康観、死生観でした。
そして抜けてしまったマナを補充するのがロミロミの役割でした。
現在も活躍するロミロミ達人と呼ばれるクプナ(老師)たちは
「ロミロミは様々な技で体を揉むというマッサージテクニックと、自然にあふれているマナを患者(お客様)に継ぎこんでいくというエネルギーテクニックによって人のココロとカラダを正常な状態に導くことだ」
と教えてくれています。
ロミロミは「患者の体を揉みほぐすのと同時に手からマナを補充して、病気の予防と治療を行った古代ハワイアンから伝わる医療」だったのです。
ロミロミは単に体を揉んで健康を維持したり種々の病気を治すマッサージ療法としての一面だけではなく、種々の治療法(セラピー)においても有効に使われていました。
たとえば…
● 温熱療法との組み合わせ
古代ハワイアンにはサウナがありましたが、このサウナの前後にロミロミを行うことで、筋肉をやわらげたり薬草の効果を高めたりデトックスの促進を行っていました。
また天然の温泉(プール)でも同様のことが行われていました。
● 薬草療法との組み合わせ
薬草を塗り込む、巻いて揉む、飲ませて揉むなどにより薬草の効果を早め、効果を高める方法としても使われていました。
● 精神・心理療法との組み合わせ
ホオポノポノ(スピリチュアルの浄化)の儀式のときにロミロミを組み合わせることによりリラックス効果、さらには精神の浄化の効果を高めていたともいわれています。
ハワイの伝統医療であり、現代のハワイアンマッサージとしてのロミロミには大学研究機関(ハワイ大学)などから科学的な視点での効果に関するリポートが発表されています。
●筋肉を揉みほぐすことで疲れやコリが軽減
●体がリラックス
●血液やリンパの流れが良くなるため、元気に、そしてムクミが取れたすっきりボディになる
●免疫力が高まり病気になりにくくなる
●便通が良くなりデトックス促進の胃活・腸活効果
●なにより気持が良い
などの期待される効果はボディケアマッサージに共通したものです。
そしてハワイの大地に育まれたロミロミには、
●心をもほぐしてくれるリラックス効果
●自然の力をセラピストを通じて注入されるため自然治癒力が高まりやすい
●西洋医学をはじめ、各種療法と相性が良い
といった効果があるといわれています。
ロミロミの効果と効用について詳しくは⇩
ロミロミにはハワイアンが長年積み上げてきた多彩なテクニックがあります。
(詳しくは下記の「ロミロミの歴史」をお読みください)
「体を揉む」だけではなく「心を揉む」…つまり心をリラックさせてクリアにするというのもロミロミの役割。様々なテクニックによって人々の体と心を爽快にクリアにしていくのです。
ロミロミの原点は正常でなくなってしまった人々の体と心を正常な状態に戻すことなわけですから、個人個人の症状や性格、状態をしっかり見極めて、それぞれにシチュエーションに合った治療を施していました。
そのために様々なテクニックが必要だったわけです。
たとえば、
内臓をぐグリグリと揉みこんで動かしたり(これはかなり痛い!)、首や体をグキグキと折り曲げてストレッチしたりするハード系なロミロミもあれば、
現在広く知られている、マッサージオイルを使って筋肉を深く揉みこんでいくことでリラックス効果もある比較的ソフト系のロミロミ、
さらには水中で行うWATSU系ロミロミ、セラピストが患者の体の上に乗って行うアエというロミロミ、薬草を身体に巻き付けたり塗り込んだりするラアウラパアウ(ハワイアンハーブ)ロミロミなど多彩な技があるのがロミロミなのです。
ハワイアンは昔から多彩なロミロミの手技や方法を持っていました。
島や先生(クム)によっても様々な技術を持っていたのです。
ここではハワイでの伝統的なロミロミテクニックのごくごく一部を文献より抜粋して紹介します。
- 足で背中をマッサージすること。
(Pukui&Elbert Dictionary,1986)
- 体のよじれ(ゆがみ)、神経系に調整が必要な時に行う「ブレークアップ」マッサージ。
(Emma Akana Olmsted, Hana, Maui, July 6,1930,HEN Vol.1,p.106)
- 肩を押さえて骨(関節)をパチンと鳴らすこと、カイロプラクティックの型。
(Pukui&Elbert Dictionary,1986)
- オイルをすりこむこと、塗り付けること、着色すること、オイルで揉むことや塗り付けること、優しくストロークすること、バターを塗るように(何かを)塗りつけること 。
(Pukui&Elbert Dictionary,1986)
- 正常な位置にない臓器を「リプレイスする(正常な位置に戻す)」こと。
(Emma Akana Olmsted, Hana, Maui,July6,1930,HEN Vol.1,p.106)
- 揉む、オイルを塗りつける、磨くようにこすること。
(Andrews Dictionary,1865)
- オイルを塗りつけること、やさしくロミロミをすること。
(Handy, Pukui, Livermore,1934,p.34)[not in Pukui&Elbert Dictionary;cf.kahi,kahikahi below]
- 肘で突く、肘をつかって圧す。
(Pukui&Elbert Dictionary,1986)
- 手のひらを使い、速い動きでマッサージすること。
(Pukui&Elbert Dictionary,1986)(cf.’unu below)
- 軽く叩く、軽く触れる。これは、まるで猫の背中をやさしくなでるかのような「タッチ療法」、軽い経擦法、滑らかなストロークも含んでいる。
(Nancy S. Kahakewai, LMT,2000,p.14)
- オイルを塗ること、オイルを使って揉むこと。
(Andrews Dictionary, 1865: Pukui&Elbert Dictionary,1986)
- オイルを肌に塗りつけながら体の表面を揉むこと、オイルを体に塗ること。
(Andrews Dictionary,1986)
- 一般的には指、手、踵などで行われ、ときには棒なども使われる、指圧に似た体のポイント(ツボ)を圧し込むような動作。エネルギーの流れを増やすこと。
(Serge Kahili King,Ph.D.,1983)
- 循環を促進するために、体の上を握りこぶしで優しくトントン叩くこと。病人をロミロミやマッサージするためのハーブの丸薬。
(Andrews Dictionary,1865)
- ストレッチングの動き(伸縮性運動)。
(Nancy S. Kahalewai,LMT,2000,p.41)
- 引っ張られること、圧すこと、引っぱること、力いっぱい引くこと。
(Pukui&Elbert Dictionary,1986)
- マッサージをするために圧すこと、圧迫すること、さすること。
(Pukui&Elbert Dictionary,1986)
- ポイを叩くように叩くこと。
(Andrews Dictionary,1865)
- 揉むこと、磨くような動作のこと、バイブレーション。
(Pukui&Elbert Dictionary,1986)(cf.olo:前後を揉む事)
- 左右の手を交互に円を描くような動作で、はじめは圧し次にソフト・ティシュー(※)をもちあげながらリズミカルに揉む、ペトリサージュ(揉捏法)のこと。ただし古典的なヨーロッパスタイルのペトリサージュが両手の平を向き合わせて行うのに対して、クーペレは手を同じ方に向けて行う。
(Nancy S.Kahalewai,LMT,2000,p.15)
- 揉む、圧す、すり潰す(ように揉む)、捏ね揉む、マッサージする。
(Pukui&Elbert Dictionary,1986)
- 疲れたり痛みを伴っている人の手足や体をマッサージしたりこすって温めること。
(Handy, Pukui,Livermore,1934,p.35)
- この言葉は練り込むような動きやマッサージ治療全般に対して使われる。(ロミロミをされることによって)細胞組織はあらゆる方向に動かされる。ロミロミセラピストは組織を広げたりバラバラにしたりするために、優しくしっかりとロミロミを行う。その様子は肉の大きな塊の筋肉の組織を細かく切り刻んでいくのと似ている。
(Nancy S.Kahalewai,LMT,2000,p.15,41)
- マナ(超自然や神の力もしくはエネルギー)を与えること。
(Pukui&Elbert Dictionary,1986)
- 体を揉んだり捏ね揉んだりすること。
(Handy, Pukui, Livermore,1934,p.35)
- 上に引き上げること、一緒に引くこと。
(Pukui&Elbert Dictionary,1986)(cf.ho’ounu above)
以上のように
ロミロミとは、人々から抜け落ちてしまった生きる力(マナ)を元に戻すことで、人間が美しく元気な「正常な状態(ポノ)」にする、ハワイアンそして南太平洋の島々の人々が長い時間をかけて作り上げた癒しのメソッドです。
体と心を正常に保つために、現在でもロミロミは進化し続けています。
クウイポのロミロミは、このアンティマーガレット女史が体系化したロミロミテクニック、さらにカイポ・カネアクア師のような多くの優秀なロミロミ達人たちが行っていた代々伝わるテクニックやスピリットを付加して、現代の疲れた人々に癒しを与えられるよう手を加えたものです。
ハワイは南の楽園と言われます。
ロミロミはその楽園から我々への贈り物なのかもしれません。
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