オハナ(ʻOhana)とは家族・一族、そして人間の深い絆をあらわすハワイ語

オハナ(ʻOhana)とはハワイアンにとって大切な単語のひとつです。

2002年に公開されたディズニー映画[リロ&スティッチ]で、「オハナとは家族のこと。家族とは、誰も置いてきぼりにしたり忘れられてしまったりしない強い絆を持った人々のこと」というセリフがあったこともあって多くの人々が知ることになりました。

もともとは「家族」「一族」を表すハワイ語ですが、ハワイアンは古代から人と人との「深い絆」を表す言葉として使っています。

ここでは、ハワイアンがとても大切にしている「オハナ」という言葉の深い意味を考えていきたいと思います。

 

オハナの意味
ʻOhana

文:Noa Yoshi
『ロミロミとハワイアンヒーリングの教科書』
『アロハヒーリング20の智慧』著者

オハナというハワイ語

ハワイ語ー英語辞書より

ʻohana

1. nvs. Family, relative, kin group; related. ʻOhana holoʻokoʻa, ʻohana nui, extended family, clan.

2. vi. To gather for family prayers (short for pule ʻohana).

(訳)

1.nvs 家族、親戚、親族グループ(一族)

2.vi 家族の祈りのために集まること(家族の祈りの略)

[Hawaiian Dictionary (Hwn to Eng)] https://wehewehe.org/

家族とその周りの血縁者、つまり一族のことを「オハナ」という。

これが辞書にある、言葉の意味としての「オハナ」です。

Photo Courtesy of Hawaii State Archives Photographer: Gonsalves, J.A., 1855-1931. Call number: PPWD-6-3-010

もう少し広い意味

またWikipediaでは、実際に使われている少し人い意味での「オハナ」を紹介しています。

オハナ(ハワイ語: ʻohana)は、ハワイ語で、広義の「家族」に相当する概念。ただし、オハナは、血縁関係がない者も含んだ意味での「家族」を意味するという点や、世代を超えて永々と続くという捉え方が強調される点に特徴があり、英語の「family」などと単純に同一視すべきではない概念であるとされる。

オハナは、もともと経済的に結び付き、精神的にも支え合う互助の関係にある血縁者、親戚の集合体を指していたとされるが、それが、血縁以外の親しい関係にある者などまで含む形に拡張される、また、そうした家族的絆を支える精神を意味するとも説明される。

ディズニーのアニメーション映画『リロ・アンド・スティッチ』や以降の関連作品では、オハナが重要なキーワードとしてしばしば用いられる。

オハナは、ハワイ語の単語として比較的よく知られており、ハワイに関わる店舗の名称などに用いられることがよくある。また、ハワイアン・レストランなどにおいて、従業員を「オハナ」と称することがある。

オハナ・ユニット

現代のハワイにおける不動産業界の用語としての「オハナ・ユニット (ʻohana unit)」は、セカンダリー・ユニット(英語版)の一種。独立した家屋の一部、あるいは、同じ敷地内の独立した離れの家屋で、不特定の他人に賃貸に出すことはできないが、親族には賃貸できるユニットのことである。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%8F%E3%83%8A

「オハナ」の元来の意味は、家族、そして血縁者までを含めた一族。
それが発展して、家族的な付き合いをする人間関係までも「オハナ」という。

これが現代の使われ方までも含めた「オハナ」の一般的な意味となっています。

本来の一族としてのオハナの意味が発展して、近年では家族的な付き合い…「同じ目的をもって生きる仲間」の意味として使われることも多くなってきているのです。

フラのハラウ(教室)で習う仲間のことをクム(先生)も含めて「ハラウのオハナ」などと表現したり、会社や店で一緒に働く仲間のことを「オハナ」などとしたりするのはこれにあたります。

さらにもう少し軽く「仲の良い仲間やグループ」の意味として広く使われることも増えているようです。

この軽い使われ方についてはハワイアン文化を大切に生きている人々から少し眉をひそめられています。

その理由は、このページを最後まで読んでいただければ納得いただけるはずです。

 

オハナとは「アロハな絆」のこと

オハナの意味を深く理解するためには、昔のハワイアンの生活様式を知る必要があります。

「家族」といってわれわれ現代人がすぐに頭に思い浮かべるのは、お父さん、お母さん、そして子供たち、少し大家族でもそれにお爺さん、お婆さんが加わったひとつの生活単位ではないでしょうか?

 

 

古代ハワイの生活単位はもう少し…というかもっと大きい単位でした。

血縁者を中心に集まった「一族」ともいえるグループ、それがオハナの基本的な意味となります。

 

古代の実際のオハナの生活を資料から見てみましょう。

古代のハワイアンはコミュニティ(生活共同体)を形成して生活していました。それは「村」というよりも絆の深い「オハナ」といわれる一族によって成り立っていましたから、コミュニティ内ではほぼすべてのことがオープンにされていました。
病人が出ると、その病人は常に一族の人々に囲まれて、暖かく見守られていました。緊急の場合には特にしっかりと見守られていたのです。
ホオポノポノは患者とオハナ(家族・一族)の中でロカヒ、つまり調和を復活させるための伝統的なシステムである。多くのロミロミセラピストはホオポノポノをベーシックな技術としてトレーニングされている。
(Dane Kaohelani Silva, 2000, p.90)
「私には子供時代から毎週日曜日にはオハナデー(家族の日)があった。それは義務的であったが、誰も決してそのようには言わなかった。オハナのすべての子供や孫たちが祖母のもとに集まった。それはとても自然なことだった。私たちは2時くらいに祖母の家に行った。祖母はすべてを取り仕切っていた。彼女は年長者から若者まで、すべてのオハナが座るテーブルを回り、一人一人に「この一週間はどうだったの?」と尋ねる。そして何か特別なことがあった時には、彼女が話を聞くのだ。」
(Kim Steutermann Rogers, 2004, p.34,36)

■参考・引用文献

(Makana Chai / Na Mo’olelo Na Mo’olelo Lomilomi 英語)
(Noa Yoshi / ロミロミとハワイアンヒーリングの教科書 日本語)

 

古代のハワイアンの生活単位(コミュニティ)は長老であるクプナとその兄弟姉妹(全員がクプナ)、そして彼らの子供、そしてその孫、という血縁者を中心とした人々が一つの敷地の中で生活していました。

さらには戦いなどで人々の生活単位が統合された場合、被統合側が奴隷のような身分となる場合もありましたが、オハナとして迎え入れられる場合があったと言いますから、すべてが血縁者というわけではなかったようです。

総勢で数十名から大きいオハナでは百数十名が生活を共にしていました。

 

オハナ
Photo Courtesy of Hawaii State Archives Photographer: Williams, J.J., 1853-1926. Call number: PP-32-9a-021

 

このオハナ内の人々は、各々が役割分担を持ち、共同生活を維持していました。

共同の道具や資産を使って、釣りや漁をしたり、畑を耕したり、家を作ったり、カヌーを作ったりして、各々が依存しあって生活していたわけです。

子供までもが水を汲んだり燃やすための木や葉、食べるための果物などを集めてくるという役割を担っていました。

上の資料にもあるように、病人が出ればオハナの中の町医者的な役割の人(ロミロミ=マッサージ、ラアウラパアウ=薬草の医者など)が治療をしてオハナ全員で見守りましたし、オハナ内の不和があればオハナ全員が集まってホオポノポノという儀式で解決していました。

ハワイ文化研究家でもありハワイ語辞典作成などでも有名な故メリー・カヴェナ・プクイ女史は「オハナは一つのタロイモから出る芽のように同じ根から生え拡がったような人々のこと」と書き残しています。

 

 

誰かが役割をサボったりボイコットをする、または病気になったりすると役割の一部が果たされないことになってオハナ全体が生活の危機に陥ってしまいます。

例えば、魚を取ってくるものがいなくなったり減ってしまうと、オハナの栄養が足りなくなってしまう、そういう危機です。

ある意味でオハナとは「命を預け合った絆で結ばれた運命共同体」のことであると言えます。

ですから欠員が出ると全員でそれをカバーしあう連係プレーなどをすることでこの運命共同体を維持してきたのです。

 

オハナはアロハスピリットから生まれた

「オハナ」と同じようにハワイアンが大切にする言葉のひとつに「アロハ」という言葉があります。

「オハナ」がハワイアンの制度的なことを指す言葉であるのに対して、「アロハ」はハワイアンの精神的な支柱となっている言葉です。

アロハは、人間や自然界のさまざまな感情や状態、生きる姿勢のうちのひとつのイメージの方向性を表すとても深い言葉なので詳細はここでは省きますが、一言では「愛」と訳されます。

人、そして海や大地や空を含むすべての「マナ(生きる力)」をもつ自然のすべてが愛し合い、助け合い、依存し合い、シェアし合う(分かち合う)精神のことをアロハと言います。

オハナはこの精神に基づいています。

オハナ同士が、愛し合い、助け合い、依存し合い、シェアし合う(分かち合う)ことで一つの成り立った世界を創り出していたのです。

運命共同体というグループのひとつの理想形だったと言えるかもしれません。

 

オハナの制度

このような運命共同体としての一族であるオハナは古代(マルケサス諸島やタヒチ島からハワイに移住する以前)から伝承された社会制度として育ちました。

このように制度が育っていく中で、様々な風習やオハナ内での制度も生まれてくることになります。

カプ

カプとは、ポリネシア文化の中で成立した「社会の掟」で英語の「タブー」の語源となったと言われています。

現在の法律と似ていますが、宗教や文化に基づいているためにとても広範囲にわたる規則でした。

ポリネシア諸島すべてに共通するようなカプ、各島々でできたカプ、各アフプアア(行政単位)のカプ、そしてオハナ内のカプ、さらに地位、職業、性別ごとにカプがあるなどとても細かい掟がありました。

たとえば、王族に対して礼を欠く行為(王族の影を踏んでしまうなど)についてのカプ、魚を取ってはいけない場所や時期に関するカプ、女性は神事に関われないとするカプなどの広範囲で共通したカプだけでなく、当然、オハナ内でのカプも生まれてきます。

家族内での掟のようなものです。

オハナ内には、お互いに監視し合い、諫め合うという一面もあったのです。

ホオポノポノ

命を預け合う運命共同体の構成員の中のワダカマリや争いなどの不調和は、オハナの存続にかかわることでした。

オハナ内での不調和があると神が怒り、神から罰を与えられる、と考えて、可能な限りワダカマリや争いのない「ポノ(正常な状態)」を保つ必要がありました。

そのためにできたシステムがホオポノポノという儀式でした。

家族の調和を保つための大切な儀式として生まれ、オハナをポノに、そしてアロハに保つために現在でも行われている習慣です。

ポノとホオポノポノについては下記の記事を読んでみてください。

ハワイアンの「ポノ(pono)」と「ホオポノポノ(Ho’oponopono)」について

ハナイ

ハナイとはハワイ流の養子制度のこと。

ただし現代流の養子制度とは少し異なります。

ハワイ流の養子制度であるハナイは、とてもオハナの精神を大切にした制度(風習)でした。

初めての孫を祖父母が養子として迎え入れて育てるというのが基本だったようです。

 

 

これは子供はオハナ全体(全員共通)の子供として神様から授かる、と考えられていたためで、おそらくは人生の知恵をたくさん身に付けた祖父母(クプナ)に子供を教育してもらおうという風習だったと考えられます。

古代ハワイでは代々職業を受け継いでいく「世襲制度」が基本でした。

そのために職業を受け継いでいくリーダーとなる長男・長女は優れた者(クプナ)が英才教育をしていく必要があったのです。

とくに位の高い王家では、当たり前のようにこの制度が行使されていました。

一般のオハナでも、フラのクプナ、ラアウラパアウやロミロミといった医療系のクプナなどの各専門職で英才教育が行われていました。

中には初孫(長男)でなくても優秀な子供をクプナが引き取って育てることもあったということを追記しておきます。

現代のオハナ

このようにもともとは血縁者を中心としてきた運命共同体である「オハナ」の意味は少しずつ変わってきています。

血縁一族としてのオハナ

まず1820年代前半の古代宗教の禁止によって宗教が変容したこと、

そして欧米式の核家族化が進み、一族がひとつの敷地内に住むことが少なくなってきたこと、

ひとつの広い土地を維持することが多くの理由から難しくなってきたこと、

など多くの原因が関係しています。

 

 

しかしながら未だにひとつの家や敷地内に2世代、3世代と一緒に住む人々が多いのもハワイならでは。

先のWikipediaにもあったように「オハナユニット」のようにオハナ内での貸し借りしかできないユニット(不動産)があったりするのも昔の名残です。

現在でも昔ながらのハワイアンオハナは、定期的にオハナがクプナ(年長者)のところに集まって食事をしたりホオポノポノを行ったりしています。

ハワイアンが、何かにつけて集まって宴をしたがるのもオハナ制度の名残なのかもしれません。

現代流のオハナ

現代のハワイで「オハナ」という言葉は、血縁一族としてのオハナだけではなく、

「目的を一つにして運命を共にする仲間」

「愛し合い、助け合い、依存し合い、シェアし合う(分かち合う)運命共同体」

という意味でも使われます。

たとえば「フラ(ハラウ)オハナ」などがそうです。

祈りという目的、または最近ではコンテストに参加する(勝つ)目的でひとりのクプナやクムの元に集まったフラの人々のことを指します。

また「オハナマネジメント(経営)」という言葉もある通り、会社やショップ、レストラン、サロンの従業員のことを「オハナ」といったりしています。

 

 

これら現代流のオハナは、自然発生的な血縁一族を表すオハナとは違い、「オハナ」として個々の人々をひとくくりにすることで目的を共有し、愛し合い、助け合い、依存し合い、シェアし合う(分かち合う)運命共同体としてのまとまりを作ろうとする意志の表れです。

移民などで多くの人種が交わるハワイならではの発展なのかもしれんません。

このようにオハナの意味も少しずつ変わってきているのです。

まとめ

以上のように

オハナの元来の意味は、家族、そして血縁者までを含めた一族。
それが発展して、同じ目的のもとに家族的な付き合いをする人間関係までもオハナといいます。

そしてその根底には

アロハな人間関係、つまり愛し合い、助け合い、依存し合い、シェアし合う(分かち合う)、命を懸けた強い絆が存在します。

このようにしてオハナの意味を考えると、

軽々しく「仲間」「友達」というグループの呼び名として「オハナ」と呼ぶことができなくなります。

ハワイアンの大切にしてきた「オハナ」という言葉、われわれもしっかり受け止めて、その精神をいただきたいものです。

 

 

 

■参考・引用文献

(Makana Chai / Na Mo’olelo Na Mo’olelo Lomilomi 英語)
(Noa Yoshi / ロミロミとハワイアンヒーリングの教科書 日本語)


Na Mo’olelo Lomilomi: The Traditions of Hawaiian Massage and Healing

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