ハワイアンの「ポノ(pono)」と「ホオポノポノ(Ho’oponopono)」について

ハワイアンが大切にしているハワイ語のひとつに「ポノ Pono」があります。ポノとは、正しい状態のこと。人間の心と体は正しい状態でなければいけません。「ホオポノポノ Ho’oponopono」とはポノな状態を保つための方法です。ハワイアンはどのようにして心と体をクリアにしてきたのかを解説します。

 

文:Noa Yoshi
📖
『ロミロミとハワイアンヒーリングの教科書』
『アロハヒーリング20の智慧』著者

 

ポノ(pono)というハワイ語

ハワイアンが大切にしているハワイ語のひとつに「ポノ Pono」があります。

ハワイ語の辞書によれば

pono

1. nvs. Goodness, uprightness, morality, moral qualities, correct or proper procedure, excellence, well-being, prosperity, welfare, benefit, behalf, equity, sake, true condition or nature, duty; moral, fitting, proper, righteous, right, upright, just, virtuous, fair, beneficial, successful, in perfect order, accurate, correct, eased, relieved

善良さ、正直さ、道徳性、道徳的資質、正しいまたは適切な手順、卓越性、幸福、繁栄、福祉、利益、代理、公平、酒、真の状態または性質、義務; 道徳的、適切、適切、正義、正しい、直立、公正、好意的、公正、有益、成功、完璧な順序、正確、正確、緩和、安心

[Hawaiian Dictionary (Hwn to Eng)] https://wehewehe.org/

と訳されます。

一言で言うと
ポノとは、正しい状態のこと

ということになります。

宇宙が安定して正常な状態にあれば「宇宙はポノ」

地球が天変地異なく穏やかに機能していたら「地球はポノ」

人がイキイキと健康で笑っていられたら「その人はポノ」

ということです。

ハワイアンにとっての「ポノ」

ハワイ文化を大切に生きるハワイアンに「ポノ」とは?と問うと、様々な答えが返ってきます。

「元気でいることだよ」

「悩み事がないことだよ」

「人と喧嘩をしたりわだかまりを持たないことだよ」

「アロハに生きることだよ」

などなど。

人、そして人間関係(とくにオハナ=家族の関係)が正常な状態であることを「ポノ」と認識しているハワイアンが大多数のようです。

ハワイのラアウラパアウのクプナ(薬草医療の老師)であるカイポ・カネアクア師は患者たちに

「幸せに生きたかったらポノでいなさい」

と言い続けています。

カイポ師によればポノな生活とは…

朝早く起きて
1日3食を規則正しい時間に
正しい(バランスのとれた)食事(栄養)を
適度な量で摂り
人に迷惑をかけず
人と争わず
自然のマナ(生きる力)を大切に考え
世の中のためになる働きをし
心穏やかに生きること

そして目指す「ポノな人間の状態」とは

幸せでいるために、心と体がクリアであること

なのだそうです。

 

だれもが知る通り、実際の(多くの)ハワイアンの生活はこのような聖人君子のような生活ではありません。

特に食に関しては、間食が多い、肉系を大量に食べる、ビールを水代わりに飲む…など、おきて破りの人が結構いたりします。

しかし、人に迷惑をかけずに、心と体をクリアでいるための術は身に付けている人は多いような気がします。

つまり生活的・肉体的にはポノでない部分が多いものの、精神的にはポノを保っているハワイアンが多いということです。

「ポノ」をどうやって保つのか、取り戻すのか

「ポノ」でいるための日常生活での方法はたくさんあります。

基本的には、
自分自身を愛し
人を愛し
神(ハワイの場合「自然」)を愛し
行動すること

です。

また古代から「ポノ」にするために行われてきた方法もあります。

「ポノ」な状態にすることを「ホオポノポノ(Ho’oponopono)」と言います。

「ホオ Ho’o(=~にする)」とポノが組み合わされた言葉。つまり「ポノ(正しい状態)にする」ことです。

ホオポノポノついてはヒューレン博士などの本がたくさん出ており、その多くが自己啓発本として紹介されていますが、実際のホオポノポノとはもう少し広い意味での「心と体がポノ」になるための方法論です。

ハワイアンにホオポノポノについて聞くと次のような答えが返ってきました。

「神様に逆らわないことだ」

「オハナ(一族・家族)を大切にすることだ」

「なにがあっても怒らないことだ」

「人と自然を愛することだ」

つまりこれらのことを気をつけていれば「ポノでいられる」と人それぞれに理解をしているようですね。

文献やインタビューによるとポノになるためのホオポノポノには次のような面があります。

心のホオポノポノ

儀式でのホオポノポノ

オハナ(広い意味での一族)の和を保つために行われていた儀式です。

家族内での裁判のようなもので不和を起こした者同士がわだかまりを水に流すために行われていた儀式です。オハナ(一族)が正しい状態であるために行われていました。


(文献引用)

ホオポノポノとは、祈りや議論、告白、懺悔、相互賠償、赦しや開放をすることで家族間の関係性を正しくリセットするためのハワイアンの伝統的な家族会議のことである。

(中略)

ホオポノポノは伝統的に、家族の長老が取り仕切った。ハワイアンは、自分の家族内に問題が起きた時、その問題について話し合うのを手伝ってもらうために、クプナ、つまり最年長のメンバーに頼った。クプナは家族を一同に集めて会議を行った。だがしばしば、家族内だけでは問題を解決することができないことがあり、その場合はカフナ・ラパアウのような外部の専門家に頼ることもあった。

ホオポノポノの手順

1. ククル・クムハナ(Kukulu kumuhana)
家族が直面している問題の確認、そして問題解決のための手順の確認。たいていはホオポノポノ・セッションの開会に先立っての説明となる。

2.プレ(Pule)
プレとは祈りのこと。ホオポノポノを仕切っている最年長者は、プレ・ヴェヘ(始まりの祈り)を行うことでセッションを開会する。(略)

3.ハラ(Hala)
ハラとは罪のことである。加害者と被害者をハッキリする、(略)

4.ホオマウハラ(Ho’omauhala)
一方が問題を解決しようと努力しているにもかかわらず、その相手が協力をしなかった場合、協力をしなかった者はホオマウハラ、つまり罪にこだわっている、恨みを引きずっていると指摘される。

5..ホオマル(Ho’omalu)
ホオマルは考え、反省するための沈黙の段階である。(略)「冷静になる」ための時間だ。

6.ヒヒア(Hihia)
ヒヒアは加害者と被害者との間にあるネガティブな感情や反応、さらに相互の「もつれ」を理解すること。(略)

7.マヒキ(Mahiki)
マヒキは家族が起こった事について話し合う時間のことである。(略)

8.ミヒ(Mihi)
ミヒとは赦しの時間のこと。告白し、悔い改め、赦すための時間である。(略)

9.カラ(Kala)
カラとは(その問題から)解放し、お互いが完全に自由になることである。

10.オキ(Oki)
オキとは肉体的、精神的に断ち切る。つまり終わらせること。(略)

11.パニ(Pani)
儀式はたいてい神に食べ物を捧げる事で終了する。浄化は祈りと共に行われた。

(Lynette Paglinawan,1976,p.89,106-108)

 

※引用文献はこちら

 


詳しく知りたい方はこちら↓

5分でわかるホオポノポノ

家庭内でのホオポノポノ

現代の小さな単位でのオハナ(家族)でもハワイ文化を大切にしている者の家庭ではホオポノポノが行われています。

家族会議というよりは家族でお互いを理解するための集いのようなものです。

(文献引用)

モーナ・シメオナは子供の頃、ホオポノポノのための家族集会に参加した。それは、問題を正しい状態に直し、家族間のストレスを解決するための優れたファミリー・セラピーだった。家族の年長者によって行われ、セッションには祈り、問題の明確化、後悔や赦しによる問題解決、罪、恨み、憤りをもつ人々をそのマイナスの感情から解放することを含んでいた。
シメオナはこう言っている。
「ホオポノポノは私たち自身の中に平和や調和やバランスをもたらすために使うことができるツール。問題やストレスの原因から解放するために自分自身をもっと良く理解する助けとなるもの、それがホオポノポノなのだ」。
(Pat Pitzer, 1984, p.78,137-138)

 

※引用文献はこちら

個人的なホオポノポノ

ハワイアンは自分自身をホオポノポノするのが上手。日常生活にうまくポノになる方法を取り入れて楽しんでいます。

自然とオハナ(家族)、ホアロハ(友達)いう恵まれた宝をうまく利用しているのがポイントです。

  • 海を眺める、海で遊ぶ
  • 山や森、川で遊ぶ
  • アウトドアでBBQ
    ※肉中心で大量に食べるのは体によくありませんが
  • ひとりで好きなこと(趣味)をする
  • 友人と一緒に好きなこと(趣味)をする
  • スポーツで汗をかく
  • 瞑想やヨガ、SUPなどで自然と一体になる
    など

遊ぶことがいちばんの心のポノを保つ方法なのかもしれません。

 

体のホオポノポノ

体を正常な状態(ポノ)にすることはあまり「ホオポノポノ」として認識されていません。

しかしながら、昔からハワイアンは心と体は一体のものと考えており、心の病が体に影響し、体の病が心に影響すると考えていました。

ですから「ホオポノポノ」は心と体、両方のために行われていたのだと考えて間違いありません。

実際に体を正常に(ホオポノポノ)するためには古代から「ホオマエマエ」「ロミロミ」「ラアウラパアウ」など多くの方法が使われました。

ホオマエマエ(hoʻomaʻemaʻe)

体をクリアにすること。つまり体に関しは「浄化」として使われます。

ハワイアンには昔から多くの浄化、デトックスの方法がありました。

●断食
●海水を飲む
●薬草を煎じて飲む、食べる
●竹製の器具で浣腸する
●ロミロミをする

ロミロミ(lomilomi)

古代ハワイアンは薬草とロミロミでほとんどの病気を治してきたといわれています。また健康を維持する方法としてもロミロミは使われていました。

詳しくは⇩

https://kuuipolomi.net/home/aboutlomi/

ラアウラパアウ(lāʻau lapa.ʻau)

ラアウラパアウとはハワイの薬草療法のこと。ハワイアンはあらゆる身の回りの植物を使って健康を保ち、病気を治していました。

 

(文献引用)

古代ハワイアンのヘルスケアにとって、ロミロミは欠かすことのできない大切な手段のひとつでした。それゆえにカフナ・ラアウ・ラパアウは可能な限りのことを行う必要がありました。祈ったり、わだかまりを無くす儀式をしたり、食べ物によって体や心をコントロールしたり、患者が治ったことを神に感謝する儀式までをすべて行うことで、人々の健康を守ろうとしていたのです。

引用文献はこちら

まとめ

前述のカイポ師は次のようにポノを説明してくれました。

「ポノな状態をイメージするには、海を思い浮かべると簡単だ。
海がクリアな「凪(なぎ)」の状態、それがポノなんだ。
荒れた海やさざ波の立っている海はポノではない。良くない状態なんだ。
心と体が波風の立っていない凪のようにクリアでバランスが取れている状態が保てれば、幸せでいられる」

「そのためにも規則正しくシンプルに生きることが大切なんだ」

しかしながら、心を「凪」のようにクリアな状態にするっていうのは現代社会ではかなり難しい。

体のホオポノポノは、自分の意思で体を動かしたり養生したりすることはできますが、特に現代社会で心をクリアにしておくのは至難の業。

仕事では相手の弱点を探って競争に勝たなければいけないし、
嫌な上司の言うことは聞かなければいけないし、
家庭でも家族は自分の思い通りにしてくれないし、
ママ友ともうまく付き合わなければいけないし、

落ち着いていたいのに、周りのいろいろな出来事が心を波立たせてきます。

カイポ氏はこう言います。

「ずっとポノでいようと思っても、それは無理。
喜怒哀楽があってこその人間なのだから、「怒」「哀」だけを感じない人間なんてないんだよ。
ただ、波風が立っても、できるだけ早く波風を治める方法を覚えることはできる」

では、その方法は?

「馬鹿になるのが一番。そして嫌なことをすぐに海に捨てることだよ」

おそらくこの「海に捨てる」を日本語にいいかえると「水に流す」なのだと思います。

考えても怒りが増すだけなのだったら、自分が損をするだけだから水に流して忘れてしまう。

そして自分の好きなことをやりたいように楽しんでやる。(人に迷惑をかけない範囲で)

それがホオポノポノの神髄なのかもしれません。

自然とともに陽気で楽しく生きているハワイアンが、「いいかげん」に見えてときどき「大丈夫か?」と見える時があります。

でもそれは、我々(私)のポノでない歪んだ目で彼らを見ているからなのかもしれません。

多くの情報と様々な欲求で頭でっかちになっていて「賢くなった」と勘違いしている頭がそう判断しているのかもしれません。

考えてみれば「いいかげん」は「良い加減」。

「ポノでありたいのなら馬鹿になれ」

ある意味で、それこそが人生を楽しむ秘訣なのかもしれません。


■参考・引用文献

(Makana Chai / Na Mo’olelo Na Mo’olelo Lomilomi 英語)
(Noa Yoshi / ロミロミとハワイアンヒーリングの教科書 日本語)


Na Mo’olelo Lomilomi: The Traditions of Hawaiian Massage and Healing

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